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スプラ2によってストレスが溜まる根本的な原因|スプラ1との比較

Keito

データアナリスト / 経営学修士 趣味はプログラミング、Nintendo Switch、カラオケです。

スプラトゥーン2が発売されてからだいぶ経ちました。今までの消費者の反応を見ると、スプラトゥーン2から多大なストレスを受けている人が多いようです。AmazonのレビューなんかはTwitterでも話題になり、「人間性を破壊するゲーム」?として有名になってしまったスプラトゥーン2笑。

どうして、スプラ2をプレイするとストレスが溜まるのだろう。本稿では、この問いをスプラトゥーン1との比較から考えてみました。というのも、スプラ1の頃はここまで批判が多くなかった気がするんですよね。スプラトゥーン2は、1の反省点を任天堂が改善したものだと思われるので、スプラ1をプレイしていなかった人が本稿を読むと、本来スプラトゥーンはこういうゲームだったんだ、という理解が得られるかもしれません。

本稿では根本的な構造要因を中心に考察していますが、こちらの記事では直接的な要因を細かく分けて分析しています。

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スプラトゥーン2は何故こんなにもイライラするのか。

2020/8/10  

みなさん、スプラトゥーン2楽しめてますか? 楽しいですよね。私も楽しいです。 でもイライラしますよね。とってもイライラしますよね。このゲーム。特にガチマッチはひどいですよね。荒野行動でいきなり狙撃され ...

根本的な要因は競技ゲームとしての完成度が高まったこと

本稿の結論を最初に述べておきます。スプラ2によってストレスが高まったのは、スプラ1と比べた時に競技ゲームとしての完成度が高まったからだと考えられます。完成度というのは、ゲームバランスという風にも言えると思います。ブキ間のパワーバランスやスペシャルの性能、戦略性が介在するかなど、いわゆるe-Sportsとしての完成度が高まった結果、ライトユーザー層にはゲームが難しくなったのでしょう。

しかし、戦略性が増したことは決して悪いことではありません。上級者にとっては、自身の戦略性を極めることで勝てる状況を生み出しやすくなったと言えるでしょう。スプラ1と比べた時、スプラ2ではキルの重要性が高まっています。例えば、ITmediaが2018年に投稿した"「Splatoon 2」をディープラーニングで攻略してみなイカ? 2018(前編) (1/3)"では、ガチエリアにおける勝利要因がデータ分析で明らかにされています。ここでは、味方チームと相手チームの合計キル数の差が、最も勝利に貢献できる要因だと判明しました。

すなわち、「Splatoon2という競技」を極める人にとっては、このようなバランスの調整は望ましいものだと言えそうです。しかし冒頭でも述べた通り、これはライト層にとっては厳しい条件を生み出します。

ライト層にとっては「理不尽さ」が増す

ゲームバランスの調整によって、ライト層にとっては理不尽さが増しました。それは、戦略がかみ合わないと一方的にキルされる場面が増えたからです。みなさんがスプラ2にイライラする直接の要因は、例えば射程格差スペシャルの性能、ブキのバランスが悪いマッチング、一部のブキの優遇等だと思います。これらの直接的要因を、根本的な原因である「ゲームとしての完成度」と照らし合わせていきましょう。

射程格差による理不尽さ

さて、理不尽さによるイライラとして、最も大きいのは射程格差によるキルでしょう。例えば、リッター4Kハイドラントクーゲルシュライバーによるキルがその代表例です。彼らは概して長射程からの攻撃を好み、前線に全く姿を現しません。自分のブキの方が射程が短くなると、一方的にキルされる状況が生まれるので、ここに理不尽さが発生してイライラすると考えられます。

しかし、戦略性の追求という観点から見ると、長射程は自分の得意な射程圏内では強いものの、そうではない局面では極端に弱くなるように作られています。すなわち、チーム全員で力を合わせて有利状況を作っていけば、長射程ブキは自ずから不利な局面に向き合わざるを得ないのです。この辺りは、皆が力を合わせれば射程格差という問題を解決できるように作られています。

戦略性としては長射程が一方的に強くなる状況はないものの、このような有利状況が本当に作られるかと言えば、そうではないような気がします。例えばA帯などでは、全員が力を合わせてオブジェクトを進める、厄介な敵を先に排除する、といった連携プレーは難しいでしょう。そうなると、やはり長射程が猛威を振るうことになり、プレイヤーにとっては理不尽さだけが募るようになります。

たとえライト層が状況を有利にできたとしても、一部の長射程ブキは短射程でも活躍できる性能を秘めています。その代表例はクーゲルシュライバーです。筆者はいまだに、このブキのコンセプトが良くわかりません。だって、長射程で有利な上に移動も早く、短射程でのキル速度も圧倒的なのだから。長射程は長射程でしか強くないようにするのがバランスを保つためには必要ですが、このブキに関してはそれを崩壊させています。

以上から、任天堂は戦略性を追求しようとした結果、上級者には射程格差をどう打開しようかという戦略性を与えたものの、ライト層にとってはただ単に長射程にキルされてつまらない、という思いを抱かせる結果となったのです。本来は射程格差を戦略性で埋められるはずが、プレイスキルに応じてその戦略性が担保されなくなり、射程格差がストレスを生み出しているのです。

スペシャルの爽快感が消えた

Amazonレビューが荒れた要因の一つが、スペシャルの変更だと考えられます。これも、戦略性の追求による影響です。スプラ1を知らない人にとっては現在のスペシャルが当たり前だと思いますが、実は1のスペシャルはもっと爽快感に溢れたものでした。自分がキルする側に爽快感があるのはもちろん、キルされる側になってもストレスなく負けられるものが多かった印象です。この、「負けた時にストレスを感じない」というのは大事なポイントで、スプラ1のスペシャルはこういった特徴を持つものが多かった気がします。

任天堂のホームページにスペシャルを使っている動画があるので、いくつかのスペシャルで爽快感を見てみましょう。

スプラ1のスペシャルの爽快感

スーパーショット

スーパーショットは、以下のように当たった敵を一発で粉砕する強力なスペシャルです。スプラ2の立ち位置的にはジェットパックが近いでしょうか。しかし、ジェットパックよりもお手軽に使えて、エイムをしやすいために、爽快感が溢れるものになっています。スプラ2のジェットパックを想像すると、キルされたときにそこまでのストレスを受けないような気がします。スーパーショットも同じようなもので、これでやられたからといって、じわじわとストレスに襲われることはないでしょう。

スーパーショットの動画

任天堂ホームページより)

トルネード

トルネードも、爽快感に溢れたスペシャルでした。動画をご覧いただければ、その迫力が伝わると思います。トルネードの強みは、自分がステージ上のどこにいても、WiiUパッドを使って好きな位置にトルネードを発生させられる点でした。ガチエリアではトルネードの応酬になるのはいつものことで、感覚的にはナイス玉が近いと思います。しかし、ナイス玉とは違って味方の協力を得る必要や、敵にキルされる心配がないので、こちらもストレスが溜まりにくい仕様になっていました。

トルネードの動画

任天堂ホームページより)

メガホンレーザー

最後にご紹介するのは、スプラ2のラストフェスでも登場したメガホンレーザーです。これでキルされると、もはや仕方ないかなと思えるレベルのスペシャルになっています。特徴は、ステージをすべて貫通してド派手な攻撃ができる点で、もっともゲームっぽい迫力のあるスペシャルと言えました。以上見てきたように、スプラ1のスペシャルは大規模で迫力のあるものが多く、使っている側も楽しいですし、たとえキルされたとしてもあまりストレスの溜まらないような爽快感に溢れていました。

メガホンレーザーの動画

任天堂ホームページより)

スプラ2のスペシャルはじわじわ追い詰める

さて、スプラ1の爽快感はチェックしていただけたでしょうか。これらに対して、スプラ2のスペシャル群は相手をじわじわと追い詰めるような性能になっています。例えば、イカスフィアやハイパープレッサー、マルチミサイル、インクアーマーなど、相手をじわじわとキルしていくようなものです。大規模で迫力のあるスプラ1のスペシャルとは対極的な性能になっています。

まず、なぜこのような性能が採用されたのかを考えてみると、やはり戦略性の追求という要因が絡んでいるように思われます。スプラ1のような大雑把な性能だと試合展開がダイナミックなものになる一方、緻密な戦略に基づいた試合は展開しづらくなります。すなわち、e-Sportsなどの競技として成立させる上では、スペシャルの性能を抑えてより戦略的にスペシャルを使わせる必要があったのです。

しかし、先述した通り、上級者は戦略的にスプラトゥーンをプレイできるものの、初心者はそこまで試行錯誤してプレイしているわけではありません。上級者向けのスペシャル性能を採用した結果、ライト層にはストレスのあるスペシャル仕様になってしまったのです。スプラ2のスペシャルは、使用に当たってそもそも技術が必要です。ハイパープレッサーがその代表例と言えます。これに対し、スプラ1のスペシャルは使用にほとんど技術を要しませんでした。メガホンレーザーの動画を見ていただければ分かりますが、やることはボタンをいくつか押すだけです。

以上から言えるスペシャルの問題点は、任天堂が対象となるユーザー層を変えたということでしょう。より上級者向けの戦略性に溢れたゲームバランスに調整することで、競技としてのゲーム性を高めたのです。しかし、これは本当に正解だったのでしょうか?Amazonレビューを見ればわかる通り、筆者はこのバランス調整が正しかったとは思いません。

そもそも、スプラトゥーンのハードはNintendo Switchであり、子供から大人までのライト層を対象としたハードが用いられています。極端に言えば、任天堂はライト層向けのハードで上級者向けゲームを発売したことになります。これでは、本来の対象ではないユーザーから不満が出るのは当然と言えます。ライト層は、もっと迫力と爽快感に溢れたゲームを楽しみたいのです。「ストレスを受けながらも勝利を目指そう!」というガチゲーマーはそこまで多くはないのでしょうか。

マッチング問題はより深刻に

チームとしてのブキ編成が悪い「マッチング問題」は、なにもスプラトゥーンに限った話ではありません。どこのゲームでも、適正なマッチングを持続するには高度な技術が必要で、マッチング自体に改善を求めるのは難しいと言えます。それではなぜ、スプラトゥーン2のユーザーからはマッチングの問題がよく指摘されているのか。筆者は、これもやはり戦略性の追求によってゲームとしての整合性が取りづらくなったことが原因だと考えています。

例えば、スプラ1では各ブキ間のパワーバランスがスプラ2ほど考慮されておらず、ある程度固まった編成になっても勝利が不可能という状況は起こりづらかった気がします(あくまでもスプラ2と比べて、ということです)。しかし、スプラ2ではブキ間のバランスが整い、さらにスペシャルによる大胆な打開策が少なくなってしまいました。ここで、マッチングの問題が起こり、いわゆる編成事故が多発するようになります。

バランス調整が整ったことで、編成事故が起こってしまった場合に、以前よりも勝つことが不可能になってしまったということです。バランスが整ったあまりにマッチングの問題が深刻化しており、なんだか本末転倒感も否めません。すなわち、スプラトゥーン2では「マッチングが上手くいくか」というプレイヤーが動かすことのできない要因によって勝敗率が左右されるという問題が起こっています。

ここで言えることはマッチング自体が編成事故の根本的原因ではなく、マッチング問題が起こった時に勝敗が決まりやすいという、構造的な問題があるということです。マッチングが悪かったとしても勝てるようなブキのバランスに調整しないと、マッチングの問題は残り続けます。マッチング自体を改善することはもちろんですが、編成事故が起こった時への考慮が必要でしょう。

まとめ

以上のように、スプラトゥーン2は戦略性を追求した結果、ゲーム自体が上級者向けのソフトになってしまい、Switchが対象としているようなライト層向けのゲームではなくなってしまいました。その結果、射程格差による一方的なキルや、スペシャル性能の変更による全体的な爽快感の減少、編成事故の問題が助長される、といったストレスを引き起こす直接的な要因が生まれました。

すなわち、ストレスの根本要因は「戦略性の追求」という、任天堂によるゲームの方向性の転換と言えるでしょう。本稿が読者のみなさんのストレスを緩和することは難しいと思いますが、ストレスが発生する構造的なロジック(として考えられるものの1つ)が理解できたかと思います。

ストレスを与える直接的な要因を深く考察した記事もありますので、ぜひご覧ください。

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